2024.8

奥之院おくのいん

一般的に奥之院というのは、寺の本堂よりさらに奥まった場所にあるお堂です。高野山真言宗で奥之院といえば、高野山にある弘法大師空海の御廟ごびょうのことを指します。

御廟とはふつうはお墓のことですが、高野山の奥之院は空海の墓所というわけではありません。というのも、空海は今も奥之院で瞑想をつづけているとされているからです。これを入定にゅうじょう信仰といいます。定とは心を定めること、つまり瞑想です。

私は20年ほど前に、父親に連れられてはじめて高野山に行きました。高野山には多くのお堂がありますが、真っ先に案内され、お参りしたのが奥之院です。

当時は御廟のまえで言われるがままにただ手を合わせ、線香をお供えするだけでした。今でもお参りの作法自体は最初に参拝した時とさほど変わりません(お経などは唱えますが)。ただ、御廟の前に立つと原点にもどってきたような感覚はあります。

奥之院の参道には無数の墓石があり、高野山の中でもかなり印象的な場所です。そのようなところを通り、空海のもとにおもむくのは、高野山ならではの体験ではないかと思います。