彼 岸
お盆が終わってひと月もたてば、秋の彼岸の時期になります。春分の日と秋分の日を中日(ちゅうにち)とし、それぞれの前後三日を合わせた七日間が彼岸の期間となっております。春分の日、秋分の日はともに日付が定められていないので、彼岸入りの日も常に同じではありません。今日では彼岸はお盆同様先祖供養の習わしとして知られていますが、彼岸という言葉にはそれとは別の意味合いが含まれています。
彼岸とは、我々衆生(しゅじょう=人間をはじめすべての生物)のいるこちら側=此岸(しがん)に対する悟りの世界、仏のいる向こう岸のことです。般若心経の中に「般若波羅蜜多(はんにゃはらみた)」というフレーズが頻出しますが、波羅蜜多とは彼岸に到達する、つまり悟りを得るという意味です。
中国では、西方にあるとされる極楽浄土に向かって念仏を唱えることが悟りを得るための方法の一つとして説かれていました。西へと拝む際、方角の目安になるのは太陽の沈む位置ですが、それが真西となるのは春分・秋分の日です。そのため極楽浄土の方向が正しく示されるこれらの時節が、悟りを得る=彼岸に至るのにふさわしい時期と考えられていました。