2020.10

観 音

日本で広く唱えられているお経の一つ、般若心経(はんにゃしんぎょう)は

観自在菩薩行深【かんじざいぼさつぎょうじん】

という文言から始まります。観自在菩薩というのは観世音(かんぜおん)菩薩と呼ばれているホトケの別名であり、観世音菩薩を省略した呼び名が観音(かんのん)です。ちなみに行深とは、修行を深めるという意味です。

観世音の字を分けてみると、世の音を観ずる、と読めます。世の音とは世間にいる人々の救いを求める声であり、観ずるとは物事を捉える、あるいは見抜くと言い換えることができると思います。

願いを持つ人々の声に、常に耳を傾けているのが観音です。観自在という名も、世の中を隈なく自在に見渡していることを表しています。

もちろん、ただ座して観じているだけではありません。人々を救うためその目の前に現れると言われていますが、そのときの姿は人々の気質や器によって異なり、様々な神仏や老若男女など、その数は 33 に及びます。

33 の姿とは別に観音にはいくつかの種類がありますが、そのうちの一つ、千手観音(せんじゅかんのん)はそれぞれの手に宝剣、経典、蓮華など様々なものを持っています。これも、人によって救うのにふさわしい方法が異なるからです。

このように観音は、あらゆる人々に心を向け、それぞれに合ったやり方で救ってくれる、格別に人に寄り添ったホトケといえます。