2020.7

蓮 華

蓮華(れんげ)は仏教を象徴する花です。経典の説く極楽には蓮(はす)の花が咲き、仏像の多くは蓮の台(うてな)に座しています。

蓮には徳あるものとされる特徴がいくつかあります。

泥の中に蓮は根差しますが、その花は泥に染まらず清らかな姿を見せます。泥は苦難や煩悩、花は悟り、清浄な心を表しています。

心身が揺さぶられるような環境の中でも、それに囚われることなく本来の姿を保っていられる、これを「淤泥不染(おでいふぜん)の徳」といいます。

他に「一花多果(いっかたか)の徳」というものもあります。蓮は一輪の花に20個ほどの種を実らせます。それと同じように、悟りは数多の幸福をもたらすという考えです。

実際に、お釈迦様が菩提樹の下で得た悟りは仏教となり、現代に至るまで厖大な数の人々に様々な影響を与えて来ました。

2020.6

写 経

日本で最も古くに写経が行われたのは、今から約1300年前だと言われています。当時の写経の目的は、経典を複製し仏教を広めることにありました。

現代で写経を行う場合、祈願、供養、修行、仏教への関心などそれぞれの理由があると思います。仏教とは関係なく単に書きたいから書くという人もいるでしょう。

ただ、写経では動機以上に書いている時間そのものが大事ではないかと思います。

筆を持ち、集中して漢字を書き連ねていく。この時間は、完全ではないにしろ、自分の心を日常の出来事から離してくれるのではないでしょうか。

日々の生活の中では周りに神経を使う場面が少なくありません。ですが、そのことだけに心を向けていては気疲れが増えるばかりです。

それとは別の、自分の書く字に集中するという神経の使い方は、日常を一時でも忘れられるかもしれないという意味で、気持ちの切り替えに繋がるのではないかと思います。

2020.4

五輪塔

お墓・供養塔には様々な形がありますが、江戸時代以前は五輪塔と呼ばれるものが主流でした。

五輪塔とは五つの形から成る供養塔で、真言宗の僧侶覚鑁(かくばん 1095年~1143年)によって広められたといわれています。

五つの形は地、水、火、風、空(五大)を表しています。古代インドには、五大によって宇宙がかたち作られているという思想がありました。

五輪塔には五大に当てはまる梵字が彫られています(画像参照)。お盆、法事などで使う板塔婆にもこの形状や梵字が用いられています。

真言密教において仏を表現する方法はいくつかあるのですが、五輪塔もその一つです。五輪塔を建てることは、亡くなられた方に対して仏が直接供養をしているということにもなります。

梵字の読み 性質 形状 字形
キャ 宝珠
半円
三角
方形

2020.3

三密加持(さんみつかじ)

真言宗の僧侶が仏の前でお経や真言をとなえるのは、多くは仏の力をお借りするためですが、単に仏を称え敬うため、あるいは仏との一体感を得るためという場合もあります。

仏と一体となることは真言密教が目指している境地ですが、密教ではこれを「入我我入【にゅうががにゅう】」と呼んでいます。仏が我の中に入るとともに、我が仏の中に入るという意味です。

ではどのようにして自分の中に仏を感じるのか。真言密教には仏を表す印相や真言、そして仏のイメージの仕方が伝わっています。手に印相を結び、口に真言を唱え、心に仏を思い描くことで自分と仏を重ね合わせようとします。

体(印相)、口(真言)、心(イメージ)の三つを仏と結びつけることを「三密加持【さんみつかじ】」といいます。三密とは仏の体・口・心の状態であり、加持とは仏の力を我々が受け取り、我々の信心を仏に向けることです。

高野山で行われている修業は、主にこの三密加持を学ぶ内容となっています。